【不親切なアニメ評】ゴールデンカムイ‐総合評価◎ グロを乗り越えろ‐

当ブログのアニメ評は、ネタバレありきで話を進めます。しかし、詳細に内容を記載しているわけでもありません。実際にアニメを楽しんだ人向けに書いています。ですから、一度観た前提で突然感想を述べていくという大変不親切なアニメ評です。

今回のアニメ評は『ゴールデンカムイ』。大人たちに大人気という印象です。事実、子ども向けとはお世辞にも言えません。

大人だからこそ楽しめる奥深さ、人間ドラマが満載。

読んでハマれば、推しも必ず見つかるでしょう!各キャラクターの突き抜けた個性も必見です。

目次

作品概要

作品名:『ゴールデンカムイ』

原作:野田サトル(2014-2022『週刊ヤングジャンプ』連載)

放送:第1期 2018年4月‐6月

   第2期 2018年10月‐12月

   第3期 2020年10月‐12月

   第4期 2022年10月‐2023年6月

   最終章 2026年1月-

日露戦争で活躍し「不死身」の異名を轟かせた元陸軍兵、杉元佐一。戦死した幼馴染・寅次の意思を汲むため、大金を求め北海道へ。そこで出会ったアイヌの少女・アシリパと共に、昔隠匿されたというアイヌの金塊を追うことに。だが金塊を追うのは杉元だけではなかった。金塊の情報を得た元新選組副隊長・土方や、陸軍中尉・鶴見が登場し、熾烈な争奪戦が展開されていく。

かん

原作はもちろん、実写版映画の評価も大変高い作品です。

良かった点

アイヌ文化の細かな描写

取材が大変入念です。日露戦争前後の軍事情勢や文化が、北海道の住民、軍人の視点でリアルに描かれています。

特筆すべきが、当時のアイヌ文化ですね。主人公とも言える女の子、アシリパちゃんが主に解説する形で、アイヌの言葉、伝統、考え、様式が詳細に語られます。

自然への畏敬、今ある資源を大切に使う姿勢などに、ハッとすることも多くあるでしょう。

美しいだけでなく、何の教訓なのかよく分からない珍妙な民話も登場します(笑)。美化、賞賛するだけでないところに、アイヌ文化を多角的な視点から伝えようという誠意、リアリティを感じます。

個性豊かで奥深いキャラ造形

本作の舞台は北海道、樺太、ロシアがメインで、そこまで広大なエリアを対象にしているわけではありません。それなのに、世界を股にかける冒険譚に勝るとも劣らないスケールで、ダイナミックに物語が展開されます。

このスケールの理由は何かと考えた時に、1人1人深く造形されたキャラたちが理由として浮かびます。

戦争や紛争に巻き込まれた人物が多く、それぞれに凄惨で複雑な過去を持ちます。その過去が彼らの行動と深く関わっており、時に寝返りや裏切りも横行します。行動理由に「過去」という裏付けがあるため、作中で巻き起こる裏切り行為でもそこまでゲス感が出ません。フィクションでよくある「自分の利益のためだけに主人公を裏切る」といった、ペラッペラのクズキャラが存在しないのです。

「人間とはそんなに底の浅いものではない」。本作は従来の薄っぺらいフィクションをあざ笑うようでもあります。

バラエティ豊かなおじさんたち

先述のアシリパちゃんは小さな女の子でありますが、他に出てくるのは大体おじさんです。

軍人、脱獄囚、漁師、罪人…実にバラエティに富むおじ様たちです。性格も外見も、描き分けが見事になされており、誰が誰だかわからなくなる心配はほぼありません。

かん

たまにキャラの名前を忘れてしまいますが…

それぞれに何かを信じ、何かを恨み、何かを欲し、何かに縋りながら生きています。おじさんだけに人生経験が豊富なので、滋味深い過去をそれぞれに持ちます。バックグラウンドの多様さも、キャラの魅力を引き立てる一因でしょう。

ヒーローもヒロインもおじさんなのに魅力的

ヒロインもおじさん、というと語弊があるのですが、本作には典型的な女性ヒロインが登場しません。前述のアシリパちゃんは大変魅力的な女の子ではあるのですが、主人公・杉元の相棒としての色が強く、恋愛は特に展開されません。

恋愛している場合じゃない緊迫場面が終始展開されている事情もあります。

その中で異彩を放つのが谷垣。原作者のお気に入りとしても有名です。

お気に入りとして有名であるにも関わらず、贔屓のされすぎで顰蹙を買うようなことがありません。これは異例です。顰蹙どころか、原作者の谷垣贔屓を読者が待ち望んでいるフシもあります。

それくらい、谷垣というキャラの魅力が際立っているということでもあります。軍人、狩猟者、喧嘩屋、時に曲馬団員として、身を呈しひたむきに己の仕事に向き合う谷垣。原作者曰く谷垣の魅力は「モジャモジャでムチムチでカワイイ」ところにあるようなのですが1、ムチムチでひたむき、誠実な谷垣は確実に読者の心をも掴み、応援せずにはいられない魅惑を放ちます。

かん

インカラマッちゃんと結ばれた際には全米が泣いたことでしょう!

ヒロイン筆頭は谷垣ですが、他のおじさん達もヒーロー(時にダークヒーロー)として大活躍です。前述の通り、それぞれに深い過去があり、過去から構築された判断基準に則って迷いなく行動を進める彼らは、どの陣営についているかに関わらずかっこいいのです。一方的に読者から嫌われるような悪役は存在しません。

善悪という乱暴な境界線をも嘲笑う、多面的な人間の奥深さがよく表現されています。

面白さが凝縮されたストーリー展開

本作は、日露戦争前後の史実を絡めたストーリーが展開されます。

歴史書って、時に小説よりずっと面白いんです。もちろん歴史の全てが網羅された記述など存在しませんが、書に残る人物たちの密な行動、その行間に何があったのか、誰が何を思ったのか、想像を巡らせるのは非常に刺激的です。

かん

中島敦作「李陵」はアツい!

本作も、歴史の行間を巧みに読み、架空をうまく織り交ぜながら、ダイナミックなストーリー展開を成功させました。

「一部のアイヌが大量の金塊を隠した」という雲を掴むような逸話を巡り、金塊への道しるべを探り合い奪い合う。争奪戦の中に、読者を唸らせる人間ドラマが繰り広げられます。

フィクションだからこその面白さもてんこ盛りです。例えば、作中一の強運の持ち主、門倉看守部長。神に選ばれし、といっても過言ではないほどの運で死地を潜り抜けていきますが、本人にはそこまで自覚がありません。

かん

有名なのは「門倉スイッチ」!

終盤で門倉は、炎に包まれるビール工場に取り残されるピンチに陥ります。しかし、門倉本人が寝ている間にピタゴラ的な装置が作動し、自動で脱出に成功します。実際に起こり得るかと言えば可能性はほぼゼロですが、ギャグに振り切った描写ですので「あり得ない!」と怒り出すナンセンスな読者はいません。もう、読んでいるうちに「門倉とはそういう人」という共通認識が出来上がるので、笑いどころとして違和感なく楽しめるのです。

リアリティとフィクションのバランスが優れているのも、本作の特徴と言えるでしょう。

気になった点

生々しいグロテスク描写(乗り越えられるかどうか)

大量の金塊を探るうえで最大の手がかりが「刺青人皮」と呼ばれるアイテムです。

読んで字のごとくです。金塊の在処の暗号が、人の皮(背中)に刺青として彫ってあるのです。暗号は1人の背中を見ればよいというものではなく、複数(大量に)集めなければなりません。しかも、刺青を彫られたのはなんと囚人…。

かん

集めようと奮い立った瞬間に絶望が襲います。

一癖も二癖もある囚人たち。見せてもらうのも一苦労です。拒まれることだってもちろんあります。その場合は奪わなければなりません。

かん

どうやって…?

このあたりの描写が大変グロテスクなのです…。刺青人皮を手に入れるというのがこの物語の鍵となってくるわけなので、物語の序盤から刺青人皮の説明が入り、収集が開始されるのですが、この序盤を乗り越えられるかどうかがポイントになってきそうです。

乗り越えれば、あとはハマるだけ。物語の沼に、徐々にのめり込んでいくこと間違いなしです。

かん

本当に面白いのですが、過激な描写も目立つため広く勧めるのが難しい作品です。

まとめ

何層にも渡るキャラの作り込みが印象的な『ゴールデンカムイ』。「人間ってそうだよな」と思わず唸ります。信念の中にも揺らぎがあり、迷いの中にそのキャラの本質が見えてきたり…現実の私たちを鏡写しにしているようでもあります。本作、変態が多めの構成ではありますが、人間というものの本質を垣間見せてくれる作品であることは間違いないでしょう。

説得力ある描写の骨組みとなっているのは、原作者の魂がこもった取材、調査。事実は小説より奇なり。歴史に残る人々の足跡を丁寧に追うことで、1人の人間では想像もつかない重厚なストーリーが生まれることがあります。

加えて、思わず惹きつけられる魅力を放つキャラクターたち。作中のどの陣営のトップも、それぞれの輝きで部下たちを魅了します。その部下たちもまた、人気の高い素敵なキャラ。キャラたちが交錯することで、生まれるドラマ。

あとは勢いのまま、感動的なラストへひた走るのみ。

フィナーレへ向けて、アニメはクライマックスを迎えます。

かん

ぜひ乗り越えて、ハマってほしい一作です!

  1. 讀賣新聞オンラインインタビュー https://www.yomiuri.co.jp/culture/subcul/20220519-OYT8T50073/3/ ↩︎
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