先にお伝えしておきます。私はアニメ『炎炎ノ消防隊』を第3期中盤まで視聴したうえで、正直に言えば「うーん…」という感想を持ちました。 これから書くのは、あくまで一個人の率直な感想です。作品を深く愛している方にとっては、不快に感じる表現もあるかもしれません。 作品の大ファンです!という方には読む価値のない記事となりますので、ここでページを閉じることをおススメします。
かんハガネメンタルって言っても、好んで喧嘩をふっかけたいわけじゃないのよ。
また、ネタバレありきで話を進めますのでご注意を!!!
作品概要
タイトル:『炎炎ノ消防隊』
原作:大久保篤
ジャンル:バトルアクション、サイエンスファンタジー
放送:第1期 2019年7月-12月
第2期 2020年7月-12月
第3期第1クール 2025年4月-6月
第3期第2クール 2026年1月-
とある大災害を境に、突然人体が発火する現象が頻発。発火した人物は「焔ビト」へと変異し、苦しみ暴れ出す。焔ビトや、それに伴う事件・脅威と戦うために設立されたのが「特殊消防隊」。幼少期に焔ビト関連のある事件に巻き込まれた森羅・日下部は、特殊消防隊へ入隊。仲間とともに世界の謎に挑む。
良かった点(燃えた部分)
OP/EDの圧倒的センス
アニメのオープニング、エンディングは、作品の世界観を左右する大事な要素です。
『炎炎』は、全ての曲がアニメの世界観を補強する、素晴らしいものでした。
個人的に1曲だけあげるとするならば、第1期オープニングの「インフェルノ」で確定です。
Mrs. GREEN APPLEの代表曲でもありますね。
「インフェルノ」がアニメ『炎炎』の人気を決定づけたといっても過言ではないくらいに、曲と作品の世界観が見事に合致していました。
合致どころか、曲とアニメがそれぞれの魅力を高め合い、相乗効果を生み出し続けていたとすら言えます。
私は普段、アニメは録画か配信で観ます。オープニングは、一度観た後は大体飛ばしてしまうのですが、「インフェルノ」は全話飛ばさず観ました。
飛ばせませんでした。
毎回、曲とアニメ動画に釘付けになるのです。
放送内容が全部「インフェルノ」無限ループでも飽きなかったかもしれません(笑)。
「アニメOPベストカップリング賞」なるものがあれば、私は迷わず『炎炎』の「インフェルノ」を推します。



カップリングに関わった人にぜひ報酬を!ボーナスを!!
バトル演出の迫力
オープニング画像でも顕著ですが、ストーリーの随所に、巧みなバトル演出があります。
吹き出す炎、風、氷。
空間や視点の動きをダイナミックに、非常に大きなスケールで描いており、その辺の遊園地のアトラクションよりよほど迫力があります。
敵対する勢力がいかに強大なものか、バトルを見ただけで視覚的に理解ができるのです。
ごちゃごちゃ説明するよりも見たほうが早い。
アニメの魅力・長所をいかんなく発揮していたのではないかと感じます。
キャラの魅力
いくら表現が巧みであっても、話を進めるキャラに魅力がなければ、視聴者はストーリーに没頭できません。
もちろん『炎炎』には、魅力的なキャラが大勢登場します。
個人の印象ですが、ひときわ存在感をはなっていたのは3人。
主人公の相棒、アーサー・ボイル
第7特殊消防隊大隊長、新門 紅丸
第5特殊消防隊大隊長、プリンセス 火華
アーサーは想像力豊かすぎる騎士。
新門は「てやんでえ」な昔気質の江戸っ子。
火華も、気持ちが良いくらいに高飛車な女王様。
3人とも特殊消防隊に属していますが、消防隊に忠誠を誓っているかと言えば、そのような素振りは皆無です(笑)。
それぞれに信念や目的があり、信念にのっとって行動していきます。
ブレないし、曲げない。
抱く信念に説得力があるので、権力に媚びを売らない在り方は非常に爽快で痛快、そして魅力的です。
彼らが動く理由は「組織への忠誠」ではなく「情」。
自分が自分であるために、最後まで戦い抜く様は胸を打ちます。



主人公が所属する第8特殊消防隊大隊長、桜備さんも魅力の点では外せません!
ひとつの異世界を描き切った構成力
『炎炎』は、原作者が作り出した架空の世界です。
一から世界を作り出すというのは大変な作業です。
進めるとすぐに、構成の矛盾にぶち当たり、八方塞がりになることも良く起こり得ます。
だからと言って、すべて魔法とか超能力で片付けられても、見る側は面白くありません。
リアリティとファンタジーがギリギリで共存するラインを創造する力量が求められますが、そんな神業を使える作家は多くありません。
その点、『炎炎』の世界観は見事だったと言えます。
人が突然燃えだすという現象。
現代にそんな現象は起こりませんが、物理的な条件が揃えば、人は燃えます。
「もしかしたら起こり得るかもしれない」とファンタジーを身近に感じさせることもまた、リアリティを生む要素となります。
見事な設定、展開でした。
気になった点(冷めた部分)
ここからは、作品を視聴していまいち没入できなかった部分を挙げていきます。
前述のとおり、あくまで個人の見解で、同意を求めるものでもありません。
ひとつの感じ方としてお読みいただければ幸いです。



容赦なく書きます!
主人公の浅さ・薄さ
ストーリーの随所で気になったのが、主人公・森羅君の軽さです。
森羅君は、幼少期より大変過酷な環境で育っています。背負うものも大きく、「焔ビトの謎を解きたい」「人々を助けたい」という思いは生半可なものではありません。
なのに、周囲の仲間にかける言葉が今一つ胸に迫らないのです。
例を2人挙げます。
モグラ君への声がけ内容が浅い
第2シーズンで森羅君は、仲間とともに未開の地へ乗り込み、過去に起きた大災害の調査を進めます。
調査の道中で出会ったのはなんと、人語を操るモグラ。



スコップという名前も持っていました!
スコップ君は森羅君たちに助けを求めます。「自分たちが平和に暮らしていたオアシスが悪い奴に乗っ取られた」と。
森羅君たちは力を合わせて事件を解決し、大災害の謎に一歩近づくことにも成功します。
事件が一段落し、さあお別れ、という際に、スコップ君はしょんぼりと呟くのです。
「ヒーローか…。森羅はすげえなあ。俺はは弱っぽっちで助けてもらってばかり。自分では何もできなくて、戦いもしない卑怯者だ」
自分は何もできなかった…。問題解決のあとに、そうやって落ち込む人は大勢います。
さて、そんな人にどのような声がけをするかが、上に立つ者の腕の見せ所なのですが…。
森羅君の回答はこうでした。
無理なものは無理なんだ。しょうがねえだろ。



ええええええええ!!!!
スコップ君、頑張ったんですよ?オアシスの悪い奴らから命からがら逃げてきて、森羅君たちに助けを求めたんです。それは勇気です。
悪い奴をやっつけるための情報提供も積極的に行いました。
更に、森羅たちが探っていた大災害の謎に一歩近づく手がかりも、余すことなく伝えてくれたのがスコップ君です。
まちがいなく、事件解決の功労者です。



スコップ君の活躍を具体的にを褒めて、自信を持ってもらうべきだったよ!
一応森羅君も、励ましを続けます。
お前は卑怯者なんかじゃねえ。意地張って抱え込んで、自滅してたら不幸だよ。スコップは、この森を守りたかったんだろ。そのために人を頼ったっていいじゃねえか。自分の弱さを認めて、助けを求めるのも勇気のひとつだぜ!



弱いとかそういう問題じゃないんだよ!
問題解決に向けて適切に助力を求めるのは「弱さを認めること」ではありません。「賢さ」です。
スコップ君は、自分にできることを全うしたのです。賞賛されてしかるべきなのですが、なぜか森羅君の言葉は「慰め」の方へ向かっています。
そして、最後の締めくくりに一言。
また危なくなったら呼べよ!



「呼べよ」って君、遠方に帰っちゃうんだよね?どうやって呼ぶの?
環ちゃんへの励まし方がズレている
『炎炎』には、ヒロインと呼べる魅力的な女子が複数登場します。森羅君の同期入隊者、環ちゃんもその一人です。
環ちゃんは、日常生活の中でなぜか服が脱げたり、胸や尻が男性の手に当たってしまったりといったハプニングに見舞われる不幸な体質を持っています。作品内では「ラッキースケベられ」と表現されており、行く先々で服が脱げまくります。
当然日常生活に支障を来たし、他の女性に「わざとなんじゃないの?」とやっかまれる始末。
ハプニングで服が脱げる、胸や尻を触られるというのは、人によってはトラウマレベルの恐怖です。
環ちゃんも悩み、なるべく人と接触しないよう部屋の隅で身をひそめるようになってしまいました。
元気のない環ちゃんを森羅君は励ますのですが、励まし方が雑なのです。
確かに迷惑極まりないけど、自分から隅に行く必要ねえだろ。(略)お前も堂々としてろよ。



…何も解決してないけど?
気にするな、ということでしょうか。
堂々とすればするほど「スケベられ」が発動してしまうわけですが、スケベられに関する建設的な解決策は提示されませんでした。
それでも環ちゃんは元気づけられているわけなので、一介の主婦が口出しすることでもないのかもしれませんが…。



それにしても不幸な体質ですね…。
「堂々としてろ」「元気出せよ」なら誰でも言えます。そうではなく、苦しみを何度も乗り越えた森羅君だからこそ言える特別な一言があると、森羅君自身に深みが出て良かったのではないかと感じます。
胸糞悪いだけの胸糞キャラ
続いてのイマイチ点は、一部のキャラ。
魅力的なキャラも沢山いるのですが、反対に残念なキャラも存在しました。
筆頭は、『炎炎』に存在するメイン宗教「聖陽教」の裏組織、「聖陽の影」の隊長です。
名前も出てきませんでしたが(笑)、ただただ気持ち悪いだけのキャラでした。
出る杭はボコボコにするわ、隊長という立場を利用して部下をいたぶるわ虐げるわ、善良な家族を虐殺するわで、同情の余地も共鳴の余地も皆無でした。
「裏組織で汚れ仕事をすべて請け負う矜持」みたいなものが垣間見えればまだ印象改善の可能性もあったのかもしれませんが、そのような背景の説明はありません。ただこの男の趣味で立場の弱い者をいたぶってるだけなのでは?と曲解されても仕方がない描写でした。
今思い出しても気持ち悪さしかありません(笑)。



早々に物語から退場したのが唯一の救い!
現実世界には、到底理解ができない人物もいます。情状の余地が全くない、根っからの悪者もいます。
けれど、日常でここまで気分が悪くなる人物に出くわす可能性というのは、ほとんどありません。ですから、日常で平凡に暮らす私たちが胸糞キャラを受け入れるには、ある程度の背景説明や説得力が必要になるのです。
ですが、こちらのキモ隊長はただ気持ち悪いだけでした。
ストーリーは「余韻」も大切になってきます。
少年漫画において「ひたすらに気持ち悪い」という余韻を残すのは危険です。
このキモ隊長ほどではありませんが、いまいち説明の足りないキャラが他にも散見されるのもマイナス評価ポイントです。
敵側の主要キャラ、
他者に危害を加える際も「私じゃない」「私のせいじゃない」と責任転嫁してしまうのもよろしくなかったと思います。「私のせいじゃない」はザコキャラが言い放つセリフNo.1ですからね…。



たった1コマで、キャラの異様さ、凄まじさを理解させる作品もあります。沢山書き込めばいい、ってものでもないのが難しいですね!
取ってつけたようなストーリー展開
最後は、ストーリー展開。
「なんでその情報、最初に入手しておかなかったの?」と突っ込みたくなる場面が多発します。
一例として、先述のスコップ君ストーリーを挙げてみます。
未開の地「空間の裂け目」を目指す中で、人語を話すモグラ、スコップ君と出会った森羅君一同。
そこでスコップ君は、住まいであった楽園(オアシス)から追い出されたのだと話します。
楽園を遠くから観察すると、森羅君たちの国にある発電装置と同じような施設が。スコップ君は
一晩かけて作戦会議を行い、森羅君一同は楽園に乗り込みます。
翌日、御神体に近づいた森羅君が改めてスコップ君に聞くのです。
御神体のことを教えてくれ。あれは、いつからあるんだ?
スコップ君の答えはこうです。
- ずっとあったものを恩人が直してくれた。
- その恩人は、動物に言葉を教えてくれた。彼女が出した炎に当たると空腹が消え、寿命が延びていた。
- 彼女は、廃墟だった御神体を直していなくなってしまった。
- 御神体のおかげでオアシスが生まれ、動物たちは生きてこられた。



…それ、絶対最初に聞いておくべき重要情報じゃない?
少なくとも突入の合間に「そういえば」という感じで聞くことではありません。
御神体を遠目に見た時点で「自分たちの国にあるものと酷似している」と気づいたわけですから、最初の段階で「あれはなんなのか」とスコップ君に詳細を確認するのが自然です。
「なんでそれ最初に話さないの?」というレベルの重大な事実が、中途半端なところで唐突に明らかになる違和感。
精鋭を揃えて乗り込んだ設定なのですから、最初の「状況整理」は必ず綿密に行われるはずです。そこで揃うべき情報が後から取ってつけたように追加されるので「その場しのぎ、でたとこ勝負なのかな?」といった印象も抱いてしまいます。



重大ニュース、突然後出しで追加!!
総合評価 △の理由
大前提として、『炎炎』の魅力は数えきれないほどありました。
ですが、現実に引き戻されるツッコミ部分が定期的に現れ、物語に没入できなかった、というのが正直な総合評価です。
高速トロッコでスリルを味わっている途中途中で、線路が陥没していて「ガコン」と体勢を崩されるような…。
まとめ
面白くなる要素は揃っていましたが、いまいち噛み合わず心が燃え切らなかった『炎炎ノ消防隊』。
それでも語りたくなる「火種」を見せてくれた作品、ということにもなります。
『炎炎』のアニメは、2026年1月に最終クールが放送されます。OPをはじめとする映像美は引き続き健在と思われますので、最後の鑑賞を楽しみたいと思います!



原作者が描き切ったひとつの異世界の結末も、しっかり見届けたいですね!




