奨学金を巡っては、あらゆる観点からあらゆる論争が絶えません。
今年の春には、親が子に無断で奨学金を申し込み、借りたお金を親の治療費に使っていたというとんでもない事例が世間を賑わせたりしましたが…1
かん子に支払いの義務はないという逆転判決が出ました!まあ、個人的にも子に支払い義務は全くないと思います…。親が返しなさいよ。っていうか、借り入れの名目と異なる使い方するの、詐欺じゃない?
さてさて。今回は「子どもに借金を背負わせるなんて!」「奨学金を払う子は親ガチャ失敗」…。
そんな風潮に対して、自身の経験を踏まえてお話していきます。
1.出典:https://shogakukinbank.jp/shogakukinchannel/1718/
奨学金はなぜ悪と言われるのか


奨学金とは、学生に学費を貸与または給付する制度です。検索すると「経済的理由や家庭の事情で進学が難しい学生に対して」という前提がついたりしますが、そこまで切羽詰まっていなくても借りられます。
「きょうだいが沢山いて、このままの経済状況でいられる保証もないからリスクヘッジとして」という理由などもありますね。
ただ、奨学金は紛れもなく借金です。「借金」という言葉や、経済的に厳しい家庭が借りる、というイメージからマイナスに捉えられがちです。
親の援助がない=不幸、という短絡的なイメージです。
あえてもう一度言います。



親の援助がない=不幸、という短絡的なイメージ!!
奨学金のメリット、デメリット
では、奨学金を借りた結果どうなるのか。成功例と苦戦例、両方見ていきましょう。
メリット


奨学金制度を活用したことで夢を叶えた学生たちが何人もいます。
父親の急死を乗り越え医者になる夢を叶えた例。経済的に苦しい家庭であったが、奨学金で大学進学し、科学者になる夢を叶え高給を手にした例。2
奨学金のおかげで学びたいことが学べ、第一線で活躍している人も沢山いるのです。
2.出典:東洋経済オンラインhttps://toyokeizai.net/category/scholarship
デメリット


日々の返済に圧迫される例はよくメディアで見聞きしますね。
月々のお給料では返済が間に合わず困窮する人。結婚したい気持ちはあるけれども、奨学金に負い目を感じ諦める人。
先に出典として挙げた東洋経済オンラインの記事にも、返済に不安を抱える学生の話は随所に出てきます。
「借金」であることが、大きなリスクです。
親が全額負担することの落とし穴
さて、奨学金を払う人たちのことばかりが議論になりがちですが、払う必要のない人たちはどうでしょうか。一概に「全員恵まれている」と言えるでしょうか。
ほとんど取り上げられないもう一方の例も観察してこそ、全体が見えるというものです。
「学費を負担しないこと」の落とし穴も考えていきましょう。
子どもの金銭感覚が鍛えられなくなる可能性
「子どもにお金の心配をさせるなんてかわいそう」という風潮が根強く残っていますが、本当にそうでしょうか。
お金の心配を全くしないで育った子は、どうなるでしょうか。
お金の教養、つまりマネーリテラシーが全く育たないまま、厳しい社会に放り込まれる可能性が出てくるのです。



まさにカモネギ!!!
学費がいくらか知らない。
利子を肌感覚で知らない。
家賃を知らない。
親の家計のやりくりを知らない。
生活するために、何にどれだけ費用がかかるかも知らない。
金融知識が何もない状態で、初任給の意味も分からずになんとなく就職先を決める。
社会に出て、怪しげなセミナーや情報商材にあっさり騙され、身ぐるみはがされるのは主にこういう人たちです。
数百万の学費をまるまる親に出してもらった代わりに、一瞬で自分の資産を数百万、数千万単位で失っていく人たちです。
自分で負担させることで、成長を促すきっかけになる
実際に子どものうちから、生きた金銭感覚を学ばないほうが危険です。
お小遣いには家賃も光熱費も通信費も入っていないことがほとんど。お小遣いの世界を学んだだけで社会に放り込まれる方がよほど危ないのは明らかです。



カモになるだけ!!!
奨学金があるからこそ学べるリアルなお金の感覚。これが自立に繋がります。
本当にかわいそうなのは「金銭感覚ゼロで社会に出ること」。
実際に金銭感覚が弱いと、詐欺や悪徳商法に引っかかるリスクも高いのです。
社会の仕組みを知らないのも致命的。本来かかってくるはずのない、それっぽい機関からの電話にうろたえ、簡単に引っかかってしまう。
すなわち、特殊詐欺です。金銭感覚が弱いと、リスクは老後にまで及びます。
親に守られたままではダメなんです。早いうちから、鍛えなければならないんです。
できるだけ社会経験を増やすという意味で、奨学金は良い勉強になります。
もちろん、無自覚に借りてはいけません。
何のために学ぶのか、何をすれば余裕を持って返済できるのか。
学生自身が考える必要があります。
自分で払った私の例


自力でコツコツ完済
ささやかではありますが、私の例をお話します。
私は大学、大学院と進学し、大好きな文学を学びました。自己紹介のページでも書きましたが、人生を好転させる出会いが、大学ではありました。この出会いがなければ、私は一生人の目ばかり気にした、うじうじした人生を送っていたことでしょう。



私の人生を180°良い方向に変えてくれたのが大学、大学院でした。
奨学金の返済があるので、お給料が低すぎる企業には就職できません。
奨学金のおかげで、給与体系や福利厚生が整っている企業を見極める力がついたと思います。
就職後にコツコツと、奨学金は全額返済しました。早いうちに返済額は貯金し、別口座へ移動させるようにしました。無利子だったのと、万一必要になった時のために一括返済はしませんでしたが、計画的にお金を貯める力が確実に身につきました。
余談ですが、後々、親から「かんの学費、払うよ」と打診がありました。
父が無事に勤め上げ、私の学費を払う余裕ができたとのことです。
しかし、私は親の申し入れを断りました。
「自力で自分の学費を払えたことを誇りに思う」と伝えました。



我ながらいいこと言ったな!笑
親は、わが子自慢でこのエピソードを周囲に言いふらしているようです(笑)。
奨学金が与えてくれた力


ポイントをまとめると以下のようになります。
- 返済しなければという責任感が働く
- 金銭感覚や計画性が身につく
- キャリア選択に真剣になる
- 貯蓄ノウハウを実践し、蓄積できる
金銭感覚や計画性が身につき、借りたものを返すという当たり前を実感できました。
自分で払うからこそ、学業にも本腰を入れて打ち込めますし、自立心、キャリア選択への真剣さも育ちます。
奨学金返済で身についた金銭感覚、貯蓄ノウハウは一生ものの財産です。
私がどんな時も優良黒字家計を保っていられるのは、奨学金を返済しながら生活を送った、生きた実績があるからです。
本質は「奨学金の有無」ではない
奨学金を美談のように仕立てましたけれども、良い面ばかりではありません。
現実に、返済が人生に重くのしかかる人もいます。
問題は、その人を取り巻く制度や条件、環境のほうです。利子が高すぎる奨学金というのも存在しますし、制度自体にも問題点は沢山あります。
ただ、奨学金を子が払うこと自体が悪い、親の恥という論調はあまりにも視野が狭く、一方的です。
親が払う、子が払う。どちらも正解になり、どちらにも落とし穴があるのです。
大事なのは「その環境をどう活かすか」。
子が奨学金を背負う場合は、必ず自分事としてとらえさせることが親の責務です。何にいくらかかるのか含め、家族で話し合いの時間を設けることが必要です。初めに挙げた「子に無断で奨学金を借りて勝手に学費以外の事に使う」なんて言語道断です!!!



ダメ、絶対!!!
学費を全て親が出す場合も、内訳を子に伝えておくと、子どもの金銭感覚が強化されます。自立するときのために、家計の収支を伝えておくのも良いと思います。子どもだって、環境さえ整えばちゃんと考えます。子どもから、思わぬ家計改善のアイデアが出ることだってあるんですよ。
まとめ
「奨学金を子が払うこと」についてお話してきました。
メリットデメリット、どちらも厳然と存在します。
そして、自立までの費用を親が全額負担することの落とし穴についても言及しました。
私は、学費を「自分で返済できた」ことが誇りです。
奨学金を借りること自体は不幸ではなく、その後どう生きるかで意味合いは変わります。



大事なのは「数値を交えてちゃんと考える」こと!
親も子も、費用というものにお互いしっかり向き合い、話し合うことができれば、どんな環境でもプラスに転じることができます。
視野の狭い風潮や軽薄な言葉に、揺らがないようにしてください。
家庭の事情は人それぞれ。周囲の誰も、無神経に踏み込むことは許されません。
どうか自分自身が後悔しない、他人に流されない人生を!!
